地元高校生が考案した「うにのリエット」

うにのリエットが出来るまで
1. 缶詰工場の水下大輔さんにお話をうかがいました
◆缶詰工場を始めたきっかけ
もともとは、仕出し業や生花店、新聞販売業を営んできました。コロナ禍で家族葬が増え、仕出しや生花が打撃を受けたので缶詰づくりに乗り出しました。缶詰工場をつくって第1号の商品が、新川高校の生徒たちと取り組んだ「ウニのリエット」です。
◆リエットとは
リエットは、フランスの伝統的な食肉加工品で、豚肉や鶏肉をその脂で煮込み、繊維をほぐしてペースト状にしたもの。私たちは肉の代わりにムラサキウニの身を使いました。フランスパンなどに塗って食べるとウニの濃厚な風味が味わえます。
この「ウニのリエット」が日本財団「海と日本プロジェクト」の「ローカル・フィッシュ・カン・グランプリ」で、ベストグルメ賞を受賞したんです。
◆ウニの問題
地元の朝日町ではたくさんのウニがいるのですが、海藻を食べて磯焼けが発生し、藻場が荒れてウニの身である精巣や卵巣がつくれなくなってきたのです。そこで身の少ないウニを買い取ってウニを養殖してくれる会社にウニを送り、身のたっぷり詰まったウニになってから買い戻します。養殖にはウニの餌として昆布を使っているそうです。
高校生らは海洋問題の解決に向けて熱心に取り組み、新しい料理である「リエット」を考案したのです。
◆地域の協力
リエットをつくる際に、地元の野菜農家、マッキーファームさんの協力で玉ねぎやニンジンを提供してもらいました。野菜をミキサーにかけてフライパンで炒め、ウニを入れます。水分を飛ばしましてね。
◆これからのこと
この後は、深層水で養殖されている牡蠣の缶詰をつくりたいと考えています。まずは若者たちが豊かな海産物資源を守ることを考えて考案したおいしいリエットをぜひ食べてもらいたい。おいしいレシピがあれば、教えていただきたいし、ワインとのセット販売も考えたいです。

2. ムラサキウニの大量発生
◆ムラサキウニってどんなウニ?
・主に北西太平洋に生育していて、日本では北海道から九州にかけての岩場や磯に広く分布しています。ホンダワラやコンブなどの海藻が生育する環境を好みます。その身である生殖腺(卵巣や精巣)は美味で、クリーミーな味わいが特徴です。ほかに北海道や三陸沿岸で取れるキタムラサキウニ、特に高級とされているバフンウニなどがあります。
◆ムラサキウニは健康にいい?
・高タンパク質で、ビタミンB群やビタミンCなどのビタミン類や、亜鉛、鉄、セレンなどのミネラルが豊富です。タウリンなど抗酸化物質も含まれ、細胞の老化を防ぎ、免疫力も高めます。タウリンは血圧を調整し、心血管疾患のリスクを減らすほか、神経細胞を保護する働きもあります。1日に50〜100グラム程度が適量とされています。
◆ムラサキウニの缶詰を使った料理は。
・パスタに加えてオリーブオイルや生クリーム、ニンニクを混ぜて軽く炒めます。仕上げにはパルメザンチーズや黒胡椒を振り掛けましょう。醤油やわさびを添えて食べるウニ丼はウニの風味を存分に楽しめますし、オムレツにしたり、リゾットにしたり、活用法はさまざまです。
◆全国各地でウニが海藻を食べ尽くす磯焼け問題とは。
・水温や栄養分の濃度が変化すると、ウニの生息に適した環境が整いますが、ムラサキウニは繁殖力が高く大量発生してしまいます。水温が高いと活性が上がり、海藻をどんどん食べて藻類が減少していきます。これを磯焼けと言います。このためウニのえさがなくなり、卵巣、精巣などの身が入らなくなってしまうのです。ウニは身が入らなくてもわずかな養分で生息できるため数はあまり減りません。東京の会社、ウニノミクスは、全国各地で問題になっている磯焼けに注目し、陸上養殖を始めました。
◆養殖会社ウニノミクス
・富山県の北日本新聞によると、富山市出身の石田晋太郎さんが社長を務めています。身が少なく利用価値の少ない駆除ウニに、独自に開発した海藻由来の配合飼料を与え、8〜12週間で太らせる蓄養技術を持っています。大分と山口両県に蓄養場を持ち、高級飲食店やホテルに出荷。ウニを間引いた海域では藻場が復活し、二酸化炭素排出削減の「Jブルークレジット」認証を受けたそうです。
◆富山県でも養殖へ
・ウニノミクスは昨年12月に、富山県朝日町に3棟の蓄養場を整備する計画を発表しました。2025年から順次建設し、フル稼働すると年間360トンもの出荷が見込めるそうです。ウニの陸上養殖施設としては世界最大規模になります。北陸三県の漁協などからウニを調達するそうで、食害ウニの駆除に取り組んできた地元の朝日町漁協、泊漁協などは、ウニ捕獲に取り組む体制づくりを検討しています。
ウニが間引きされれば、藻場が回復し、他の魚介類が育つ環境を取り戻すことができます。小魚、サザエ、アワビなども生息できる豊かな海の復活も期待できるのです。

◆缶詰料理「ウニのリエット」
・リエットはフランスの伝統的な食肉加工品で、豚肉や鶏肉をその脂で煮込み、繊維をほぐしてペースト状にしたものです。新川高校の生徒たちは地元沿岸の磯焼けに問題意識を持ち、肉の代わりに養殖したウニの身を使い、リエットを開発しました。フランスパンなどに塗ったりパスタに入れて食べると独特のウニの食感と風味を味わえます。リエットには地元の野菜農家、マッキーファームに提供してもらった玉ねぎ、ニンジンも使っています。缶詰づくりと販売は朝日町の会社テイストが担当しています。
「ウニのリエット」は日本財団「海と日本プロジェクト」が実施した2024年度の「ローカル・フィッシュ・カン・グランプリ」でベストグルメ賞を受賞しました。